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50年前の経営学

坂本藤良教授の「経営学入門」を読んだ。初版が昭和33年だから約50年以上前の書籍となる。どなたかが紹介していたので、アマゾンで注文してみました。今では懐かしい光文社のカッパブックス(今でもあるか?)で、さすが50年前の本、定価が300円です。

内容は基本的な経営学のタイトルが並んでいるのだが、これが日本の経営学のスタートなのかと、ある意味愕然とさせられる内容であった。一番驚いたのが、経営に「会社VS組合」という枠組みが大きな影響を与えていたということである。経営学をテキスト上で理解していたので、その当時の社会、政治状況と沿った学問であることを知りえたこの本は大変衝撃的でもあった。

その代表的な表現として、「提案制度」が取り上げられている。今まで「提案制度」というのは人事面でのメリットが大きい施策だと理解していたが、この本では「知らず知らず会社側に立ったものの考え方をするように頭が慣らされて・・」というくだりがあるように、経営者側の社員を手名づける手段として捉えられているのが、何か腑に落ちないというか、すっきりしない考えだなと思う。でも、その当時、30年代はじめでは、経営というのはそんな切羽詰まった感覚があったのであろう。

また、「オートメーション」という章がある。これも、運営管理的な捉え方でなく、団体交渉とか賃金決定理論まで踏み込んだ内容になっている。この辺も、今の感覚とは少し違うような。そもそもオートメーションという言葉自身が死語になってきているのだから。

マーケティングの章も面白い。定義を「企業が大衆のなかにとけこむ技術である」としている。これもまだプロダクトアウトの思想がプンプンしている。もちろん、社会のニーズを取り込むことが大切だとは触れているが、全体としては作れば売れるという発想の元に立ったマーケティング理論に感じた。

財務の章もまた面白い。「株主にとって、もっとも大切なのは貸借対象表ではなくて、損益計算書だ」と述べている。それも財務諸表は粉飾ばかりといった内容も。今では考えられないが、キャッシュフローという概念自身もまだない時代であったのだろう。

坂本教授は日本の経営学を語る上では忘れられない人物であることを、この本は教えてくれた。同時に、経営学というのはフィールドワークであり、感性形のない常に深化している学問であることを改めて知った。常に勉強せよということである。

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